前世の遺恨オリオンの恋魂の片割れ
時を経て、縁もゆかりも有る者同士が時間と空間を共有した。
似たような出来事を通して、事が展開した
「キミは自分の才能をドブに捨てるつもりか?」
バブル期の六本木で彼は言った。 結婚することを告げた夜だった。
「彼は魂の片割れではないよ」
そんな注意事項はすっかり忘れ去っていた。
雨粒が一滴、また一滴地上に降ってくる。
雫はどこからやって来るのだろう。
大海から蒸発してきたのか、誰も知らない小さな川からか?
人間の吐息からでもあるだろう。
天に集まり、地上に降り立ち、幾通りもの旅を経て天へ。
止むことのない循環の中で、雨は雫となってまた降りて来る・・・

 

【前世の遺恨】

その夜私は、床に突っ伏して詫びていた。
相手は40歳以上も年上の霊能者。

もしかしてコレは土下座??
そんな意識とは別に、私の声が語っていた。

「本当に申し訳なかった。そなたをたばかる衆を止める力が、私にはなかった」

言葉は私の口から飛び出しているけれど、
そしてもの凄い謝罪の感覚があるんだけど、
感覚が自分のものじゃないことは明らかだった。

彼女は棒立ちになり、涙を流していた。
と思う・・・。
何か聞こえたが、聞き取ることができないほど、細く小さな声だった。

どれくらい時間が経ったのか、全くわからなかった。
そのあと、どうやって眠ったのかも思い出すことができない。

 

【過去世の遺恨が現象として現れた。その始まりとは・・・】

そもそも私宛の手紙を無断で開封して、検閲まがいのことをしたのは彼女だった。

そのことを知り、激しく怒ったはずだったのに、
どうして私が土下座して彼女に詫びていたのか???

翌日、4時半起床。
いつもの朝詣りに出かけた。
妙に身体のあちこちが痛み、頭の芯がジンジンしていた。
それでもじっくり思い出すなんてことができなくらい、一挙手一投足に集中した。

考えたとしても整理がつかない。
時系列を無視した出来事を無理矢理理解しようとしても、
意味付けしてしまって、より複雑になる。

私は考えることも整理することも完全に放棄した

その日最初に自分の声を耳にしたのは、祝詞をあげたときで、
音に全ての神経を集中していた。

普通に声を出すと、叫んでしまいそうだったから。

 

背景となった前世・・・、時は14世紀ごろの朝鮮だ。
彼女も私も男性で、ともに武官だった。
親しい間柄で、家族ぐるみの付き合いをする仲だった。

時の政権争いの渦に飲まれ、派閥を追われたのが彼女。
追われるだけではなかった。
彼女(彼)の妻は毒殺され、娘二人は惨殺された。
息子は行方が分からないままだ。

私は知っていた。
派閥を率いる存在が、正義感に燃え、派閥になびいては来ない彼女(彼)を疎ましく思っているのを知っていた。

汚名を着せる策略・象徴する出来事・・・

表向きは友好的に振舞っていた派閥の長は、
彼女(彼)宛ての書簡を途中で差し替えていた。
反逆者としての汚名を着せて抹殺するためだ。

時を経て、縁もゆかりも有る者同士が時間と空間を共有した。
似たような出来事を通して、事が展開したようだった。

18歳のあの夜の出来事・・・。
不可解で強烈な印象は、
過去世というものの存在を身体で知ったという他表現のしようがない。

その後、彼女も私もその夜の出来事について語ることはなかった。

レインドロップス・・・・
雨粒が一滴、また一滴地上に降ってくる。
雫はどこからやって来るのだろう。
大海から蒸発してきたのか、誰も知らない小さな川からか?
人間の吐息からでもあるだろう。
天に集まり、地上に降り立ち、幾通りもの旅を経て天へ。
止むことのない循環の中で、雨は雫となってまた降りて来る・・・